生体物質と希土類錯体のかかわり

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06241103
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 小宮山 真 東京大学, 工学部, 教授 (50133096)
• 研究分担者: 辻 章夫 昭和大学, 薬学部, 教授 (80053784)
• キーワード: 希土類錯体 / DNA / RNA / イムノアッセイ / 抗原抗体反応

研究概要

近年、生物と化学の接点が大いに注目され、様々な形態で生体物質に対して働きかける人工材料の開発が期待されている。これまでにも、希土類錯体が物理化学的に種々の特異的な機能を発現することは広く知られていた。しかし、それらの機能を生命化学に応用した例はきわめて少なく未開の分野であった。平成6年度は、本重点領域研究の初年度であるので、研究代表者も分担者もいずれも、それぞれの研究課題に関する基礎的知見の蓄積に努めた。小宮山は、DNAやRNAの加水分解に対する高触媒活性を維持したままで、しかも分子認識能を持つ高機能希土類錯体を合成することに成功し、DNAやRNAを望みの位置で切断する人工制限酵素を開発した。また、希土類イオンによるDNAの加水分解の触媒機構を明らかにするとともに、なぜ触媒作用が希土類イオンに特異的であるかを解明した。一方、辻は、希土類錯体と生体分子とをハイブリッド化し、生体内の特定分子に対して選択的な結合能を持ち、しかも大きな蛍光強度を持つ希土類錯体を構築した。特異抗体を希土類キレート錯体で標識する方法、および、これを精製する方法に関して最適条件を検討し、生体成分の時間分解蛍光イムノアッセイ法を確立した。さらに、生体試料中の分析成分を前処理することなしに直接分析する方式、ならびに、アフィニティークロマトグラフィーによる固相抽出法を検討し、高感度でしかも高選択的に生体物質を分析する方法を開発した。

研究成果

• [文献書誌] Jun Sumaoka: "Enormous acceleration by cerium(IV) for the hydrolysis of nucleoside 3´,5´-cyclic monophosphates" J.Chem.Sec,Chem.Commun.1755-1756 (1994)
• [文献書誌] Morio Yashiro: "Cerium(IV)-cyclodextrin complex for peptide hydrolysis in neutral homogeneous solutions" J.Chem.Sec,Chem.Commun.1757-1758 (1994)
• [文献書誌] Makoto Komiyama: "Selective hydrolysis of tRNA by ethylenediamine bound to a DNA oligomer" J.Bivchem.116. 719-720 (1994)
• [文献書誌] Kazunari Matsumura: "Lanthanide complex-oligoDNA hybrid for sequenceselective hydrolysis of RNA" J.Chem.Sec,Chem. Commun.2019-2020 (1994)
• [文献書誌] Kazunari Matsumura: "Lanthanide(III) complex-oligoDNA hybrid as artificial hydrolytic nuclease" Nucleic Acids,Symp.Ser.31. 201-202 (1994)
• [文献書誌] Morio Yashiro: "Solubilization of lanthanide metal ions by cyclodextrins in basic agueous solutions" J.Incl.Phenom.Molec.Recog.17. 393-397 (1994)