希土類イオンを含む分子性キレート錯体の合成と遷移金属イオンと希土類イオンを含む多核錯体の合成およびそれらの物性を明らかにすることが目的である。まずLn(dike)_3(diam)錯体の合成法を検討した。出発錯体Ln(dike)_3の合成法として、従来の文献による方法を試みたが、その収率は極端に悪く、本研究のためには不適当であることがわかった。そこでさまざまの試行錯誤の結果得られた方法は、収率が非常に改善され、このタイプの錯体の新合成法として確立できた。方法はきわめて簡単であるが、ジケトンとアルコール比(1:1)の溶液にランタニドの塩化物を加え、良く攪拌しつつトリエチルアミンを加え環流すると良い結晶が得られる。これを用いてジアミンを含む混合錯体を合成した。現在、まだ良好な結晶が得られず構造解析には成功していないが引き続き単結晶の単離を検討している。次に遷移金属錯体と希土類イオンとの多核錯体の合成の前段階として、[Fe(CN)_2(Phen)_2]とLn^<3+>イオンの溶液内の相互作用を調べた。もともとこの鉄錯体は溶液中で顕著なソルバトクロミズムを示すもので、溶媒の酸性度のパラメータであるが、これを希土類イオンのイオン半径の違いによる酸性度との関係に適用した。その結果、希土類イオンのイオン半径が小さくなるにつれて鉄錯体の色はブルーシフトすることがわかった。現在、CN-イオンを一つ含む系を新しく合成しその鉄錯体と希土類イオンとの相互作用も検討している。これらの結果についてはきたる5月の希土類討論会で発表予定である。
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