研究概要 |
核酸の切断には2段階の活性化過程が含まれるとされているが、燐酸ジフェニルでは後段の過程の活性化エネルギーが低下するため、例えば、隣原子が切断に際して5配位構造を形成する場合、配位直前の構造が観察にかかる可能性が高い。そこで、同材料に希土類イオン及び他のイオンを作用させた状態で光電子分光、STM観察を行い、分子・電子構造の解析を試みた。光電子分光における内殻電子のエネルギー値は、原子を取り巻く外殻電子の量により影響を受けるため、内殻準位のシフトを測定することにより原子間での電荷移動を相対的に比較することが可能となる。Ce(IV,V),La,Al間のイオンと燐酸ジフェニルとの混合溶液から得られる沈殿物に対して上記測定を行った結果、1:1の混合比は、いずれの系においても、各イオンからP原子への電荷移動を示すが、金属の混合比を10倍にすると、Ce(IV)のみが逆に電荷移動を示す結果が得られた。DNAを切断するのが同イオンのみである事実を考慮すると、核酸の切断に際して電荷移動が重要な役割を担う可能性が高い。また、EXAFSでは、Fe-La、及びFe-Zn間の特異構造を明らかにする目的でEXAFSの測定を行った。Fe-La系では、吸収端の振動が速やかに減衰することから、Fe原子の回りを酸素等の軽い原子が取り巻いている構造が多く存在していることを示唆している。実際、Fe-Laが特異な構造を持つとしてもイオンの濃度比が1:1の場合、その量は数%程度であるという結果が他の実験より得られている。また、以上の結果から、複雑な構造を形成している可能性は少なく、今後、La/Feの濃度比をあげることにより2原子系の構造と切断との関連を調べる予定で準備中である。
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