研究概要 |
ゼオライトに固定化したユーロピウムあるいはイットリビウムのアミド錯体は加熱下で排気することにより、固体強塩基性が発現する。さらに高温処理をおこなうとオレフィンに対する水素化能を示すようになる。強塩基性を示すゼオライトの合成は形状選択性塩基触媒がファインケミカル合成に必要であるという立場から工業的に極めて重要視されていたが、成功した例は全く無い。従って、本触媒系の発見は、応用研究に対しても意義深いものがある。しかしこの触媒試料は空気中では極めて不安定であり、その物性研究はほとんど進んでおらず、活性種の同定は全く不十分である。我々は、イットリビウム種のX線光電子スペクトル(XPS)やX線吸収スペクトル(XANES)の測定に成功し、固体塩基の活性種は、酸化物種でなくアミド種であること、また、水素化触媒活性種は従来提唱されてきた金属粒子ではなく、窒化物であり、加熱排気下においてイットリビウムの原子価が著しく変化することを見いだした。特にアミド化合物が強塩基活性種となることが見いだされたのは初めてであり、固体の塩基性質、発現機構を明らかにするということでは極めて重要な結論である。ユーロピウムに関しても同じような変化が起こっているものと予想されるが、ユーロピウム表面錯体の方が活性が高い。従って、ユーロピウムの構造、電子状態を含めた触媒反応のメカニズムを調べることは、希土類アミド化合物が強塩基活性種を発現するという現象の一般化に対してより良い指標を与えるものと期待される。本研究においては、主にin situ XAFSによりユーロピウムアミド錯体の金属酸化物種上での電子状態の変化について検討を行った結果,ユーロピウム種の変化は概ねイットリビウム種のものと同じであったが,塩基性活性種としては,イミド種であることが見い出された。
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