希土類金属間化合物の物性はf電子の波動関数の重なり、即ち混成効果に強く支配されている。物質の圧縮率は近似的にその結合力に反比例する物理量であり、その定量的解析から我々は結晶構造変化、価数転移ばかりでなく、その物質の結合様式を明らかにする事が出来る。本研究は高圧下のX線回折を使い、格子定数の圧力変化や歪み計を使った熱膨張の測定から、高圧下の希土類化合物の電子状態に関する知見を得ることを目的とする。本年度は試料としてCeT_3(T=Al、Pd)化合物にたいする測定を行い以下のような結果を得た。 (1)CeAl_3の高圧下におけるX線回折 CeAl_3は六方晶型結晶構造を持つ金属間化合物である。このため格子定数はa軸とc軸にたいして測定された。a軸、c軸共に圧力に対して滑らかに減少し、室温下16万気圧まで不連続な飛びや結晶変態は観測されなかった。圧縮率はa軸とc軸の間で大きな違いがあり、a軸のほうが2倍以上圧縮されやすい事が分かった。又軸比c/aの値は高圧下で増加していき六方最密構造の場合の理想的な値1.63に近ずいていくことがわかった。体積弾性率Bは53.6GPaとなり他のCe化合物に比べて異常に小さいことが分かった。この事実はf電子の強い局在性を示唆しているものと思われる。 (2)CePd_3の熱膨張 CePd_3及び参照物質としてLaPd_3の熱膨張を4.2K-300Kの温度範囲で測定した。熱膨張係数への磁気的な寄与α_<mag>(T)は約140Kで最大値をとり、結晶場の存在によるShottky型の異常を示唆している。またこの温度で電気抵抗も広い山を持つことがわかった。
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