金属と比較してはるかにキャリア密度の低い半導体Siに、磁性金属であるCeをドープし、電気的・磁気的性質の評価を基にキャリアとCeイオンの相互作用を明らかにしようとした。薄膜について評価する前に、この系の持つ基本的な特性を知る必要があると考え、パルクのSi-Ce合金について評価した結果を中心に述べる。 1)3種類の試料、A:Si-0.046at%Ce、B:Si-0.43at%Ce、C:Si-0.69at%Ce合金をアーク溶解法によって作成した。結晶粒径はCe濃度とともに減少した。X線回折により、AではCeSi、BではCeSiとCeSi2、CではCeSi2の存在を明らかにし、SEM観察によりこれらのシリサイドは結晶粒界に析出していることを確認した。 2)室温におけるホール係数と電気抵抗率を測定した。純Siと比較して大幅な抵抗率の低下とキャリア密度の増加を認めた。伝導型はp型であった。 3)抵抗率の温度依存性(4〜300K)については、AとBではTが0に近づくほど抵抗率が増加する半導体的挙動を示したが、Cでは20Kで極大となり低温側で減少した。 4)帯磁率の温度依存性と1)、2)および3)の結果から、AとBではシリサイドが形成されていても、体積率が小さいため、マトリックスに分布するフリーのCe^<3+>が合金の電気的・磁気的特性に寄与するところが大きいが、CではCeシリサイドが粒界に大量に形成され、それが合金の物性に対して支配的であると考えた。 5)成膜装置を組立てた。薄膜結晶成長の特長を利用して、非平衡にCeを固溶したSi-Ce膜を作成し、とくにフリーのCe^<3+>に注目して特性評価を行っている。
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