研究課題/領域番号 |
06242101
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡本 佳男 名古屋大学, 工学部, 教授 (60029501)
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研究分担者 |
菅原 正 東京大学, 教養学部, 教授 (50124219)
西郷 和彦 東京大学, 工学部, 教授 (80016154)
藤原 隆二 島根大学, 理学部, 教授 (10028847)
青山 安宏 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (00038093)
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キーワード | 有機結晶 / 分子認識 / 不斉識別 / 分子配列 / 包接結晶 / X線解析 / 結晶反応場 / クリスタルエンジニアリング |
研究概要 |
以下の5課題についての研究成果をまとめる。 結晶性高分子による不斉分子認識:側鎖の2,3位および6位の水酸基を位置特異的にフェニルカルバメートおよびベンゾエ-ト基に置換した新規な多糖誘導体の合成および、同様の手法を用いた多糖フェニルカルバメート誘導体のシリカゲルへの位置特異的化学結合に成功した。また、分子設計支援システム(本年度購入)を用いて、セルローストリスフェニルカルバメートの安定構造を分子力場計算を用いて構築し、幾つかの光学異性体との相互作用エネルギーを計算で求めたところ、HPLCによる実験結果を支持する計算結果が得られ、この手法が、多糖誘導体の不斉分子認識の機構を理解するうえで有用であることを明らかにした。 有機結晶における分子配列と反応の制御:水素結合ネットワークを有する多孔質結晶であるアントラセンのビスレゾルシン誘導体が、炭化水素から水にいたる種々の極性をもったゲストを種々の物理状態(液体、気体、固体)から化学量論的に空孔内に取り込み、また、水中からも水溶性のゲストを取り込むことを見いだし、「有機ゼオライト」としての機能を有することを明らかにした。 包接結晶のX線解析による分子認識機構の解明:キラルな酒石酸誘導体をホストとし、エナミドをゲスト分子とする二種類のホスト・ゲスト包接化合物結晶に紫外線を照射することにより、キラリティーの異なるキノリンが生成する反応を、二種類の包接結晶に光照射する前のX線結晶構造解析から、光照射後の反応生成物の構造を予測できるか否かを追及した。戸田とのこれまでの一連の研究結果とは異なり、この光反応の場所はゲスト分子の原子間距離から予測することができたが、キラリティーの推定は困難であった。 有機結晶のクリスタルエンジニアリング:ジアステレオマ-塩形成過程におけるキラル識別について、1-フェニルエチルアミン誘導体を光学活性1-ヒドロキシカルボン酸で光学分割する場合を代表にして、X線結晶構造解析を行ったところ、1-ヒドロキシカルボン酸が水素結合によって単層を形成し、1-フェニルエチルアミン誘導体の分子長が1-ヒドロキシカルボン酸の分子長とほぼ同じ場合に、効率的な光学分割が達成できることを明らかにした。さらに、α,β-不飽和カルボン酸塩の光反応を試み、E,Z-異性化が選択的に進行するすることを見いだした。 結晶反応場における中間体の解析と制御:数種のアリールアジドの結晶構造解析により、アジド基は静電的相互作用に基づき、head-to-headダイマーを形成するため、アゾ形成に適した反応場形成能力があることを見いだした。また、この様な結晶環境下で光化学的に発生したアリールナイトレンは、反応場の分子環境を認識しつつ挙動することを、ナイトレンの速度論的安定性、消滅速度に関する熱力学的パラメーター、生成物分析より明らかにした。
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