研究概要 |
本研究の目的は,ポリフィリン環のメソ位にアルキルアンモニウム塩側鎖の有するポルフィリン化合物を収率良く合成する手法を開発し,それを粘土モンモリロナイト(Na-Mont)層間に導入し,ポルフィリン化合物の配向・配列状態を明らかにすることである.まず,独自に開発した粘土K10触媒によるポルフィリン合成法を利用して,6-クロロヘキサナ-ルとピロールから出発して,メソーテトラキス(5-トリメチルアンモニオペンチル)ポルフィリン(TMAP)が41%の合成収率で得られた.Na-Montはカチオン交換能があり,その層間へ種々のカチオンをイオン交換により導入することができる.4価カチオンであるTMAPはNa-Mont中の4個のNaイオンと化学量論的にイオン交換することがわかった.粉末X線回折結果より,得られたTMAP-Mont複合体は,その層間距離を原料粘土の3Åから10Åへ拡大していることも明らかとなった.メソーテトラキス(1-メチル-4-ピリジニウミル)ポルフィリン(TMPyP)を粘土層間へイオン交換した先行研究例では,層間距離が4.3Åまでしか拡張しない結果と比べると,大きな差が認められた.また,TMPyP-粘土複合体ではポルフィリン環がジカチオン型になるのに対し,TMAP-Mont複合体はフリーベース型をとっている点も大きな違いである.TMAP-Mont複合体では,層間距離が10Åと大きいことより,ポルフィリン環同士が層面に対して立った配向で,しかも比較的密に配列していると推定することができた.
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