分子動力学法で有機分子の結晶構造を計算するためには、複雑な分子間相互作用を精度よく表現するポテンシャル関数が必要である。この目的のためには、レナード・ジョーンズ型ポテンシャル関数のような、従来からよく用いられている関数では限界があるため、我々は量子論効果を近似的に考慮した精度の高い新しいポテンシャル関数の研究を行ってきた。本研究では、メタン、エタン、ベンゼンなどの基本的な有機分子について、ポテンシャルパラメーターを非経験的分子軌道計算から得られる分子間相互作用エネルギーにフィットする一般的な手順を研究し、これを適用して先の分子のポテンシャル関数を実際に作成した。一方、格子エネルギー最適化法のプログラムを作成し、これらの分子の結晶構造を計算した。これにより、我々のポテンシャル関数はおおむね結晶構造を再現できることが分かった。本研究の成果は分子性結晶の計算予測および解析の研究に展望を与えるものである。
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