研究分担者 |
薬師 久弥 東京大学, 分子科学研究所, 教授 (20011695)
豊田 直樹 大阪府立大学, 附属研究所, 教授 (50124607)
大嶋 孝吉 岡山大学, 理学部, 教授 (10114414)
石黒 武彦 京都大学, 理学部, 教授 (50202982)
池畑 誠一郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (30107685)
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研究概要 |
本研究の目的は分子性導体の電子状態の特徴を探り,電子相関の役割を実験的に解明することである。基本物性の解明と新物性の探索を車の両輪とし,特徴ある測定法と新しい試みの開拓をこれと並行して進める。 基本物性の解明では,BEDT-TTF系2次元導体の電子構造を,温度,圧力,磁場をパラメターとして詳細に調べ,フェルミ面のトポロジーと電子状態の関係を吟味した。また,この系では金属-非金属転移とともに,反強磁性・寄生強磁性などが現れることを磁気測定によって明らかにし,金属電子状態の電子相関について考察を進めた。さらに,この系の超伝導の対称性を探った。DCNQI-Cu系物質では再入転移にかかわる金属相,絶縁相それぞれの基本的性質を解明したが,再入転移の機構については未解決である。 新物性の探索では,DCNQI系物質の核磁気共鳴によって1次元的バンドと3次元的バンドの電子状態を区別して調べ,電子状態を新たな角度から探ることを始めた。また,BEDT-TTF系物質で,強磁場下での磁気貫通と量子振動の関係という新たな現象を吟味した。 特徴ある測定法として,光電子分光法ではDCNQI-Cu系物質のその場観察を試み,従来の結果よりやや2価イオンの割合が少ないという結果を得た。ラマン錯乱では,DCNQI-Cu系物質でのCuイオンの秩序化に伴うピークなどを見出した。 新しい試みとして,伝導バンド充填率の制御をめざして,BEDT-TTF分子とTCNQ系分子との錯体の電子状態を探り,反強磁性状態や金属状態を発見した。また,コバルトフタロシアニンの電子状態の究明や,ペンタセンのn型ド-ピングによる新たな分子性導体の開発を試みている。
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