研究概要 |
数年前、京大・石黒グループとの共同研究中、α-(BEDT-TTF)_2KHg(SCN)_4の電気抵抗が約200mK以下で減少することを見い出した。その後、同じ系列の(BEDT-TTF)_2RbHg(SCN)_4にも同様の現象があることが判り、フィラメント状の超伝導によるものと指摘した。これらの電子基底状態は、M=K,Rb,Tlでは、約8K以下でSDW相、M=NH_4では約0.8K以下で超伝導相と考えられてきた。しかし前者に関しては、はっきりしない点も多い。そこで、M=K,Rbの1K以下での抵抗減少の原因を究明し、真の電子基底状態を決める為、磁気的測定を試みた。測定としては、rf SQUIDを用いてAC帯磁率と磁化を同時に測定した。予想される信号が小さいので、バックグランドを極力抑える必要がある。先ず、測定システムの動作チェックと比較の為にM=NH_4の測定を行った。得られた臨界磁場の温度依存性は、J.Brooksらのものと良く一致している。一方、M=Kでは一つの試料について小さい反磁性信号が観測されたが、その大きさから推測すると、全体積の1%程度によるものと考えられる。又、約数ガウス程度の弱い磁場でこの反磁性信号が消えてしまう。これから超伝導成分が存在するとしても、非常に弱いものであると考えられる。さらにM=Rbについては、これまで2種類の試料について同様の測定を行ったが、バックグランドを越える反磁性信号は観測されていない。今後、多くの試料についての測定の他、一軸性高圧下の測定を行いたい。さらに静水圧下では、ヘリウムを圧力媒体とする精密な圧力制御が可能な高圧装置の開発を計画している。
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