研究概要 |
本年度は、電荷移動型金属錯体;[M(H2DAG)(HDAG)]・TCNQ(M=Ni,Pd,Pt)の磁性、光学スペクトル、ラマン散乱、X線解析、電導度、やその低温、高圧実験の基礎物性測定を行った。その結果、この物質が常温近傍で半導体一金属転移を示し、その要因が鎖間の水素結合の融解によることが判明した。このような相転移の観測ははじめてのものであり、世界的にも大いに注目されるものである。さらに、基礎物性の立場からこのシステムの物理的内容を明確にするために次のような実験を試た。 1)光電子分光測定 2)プロトンおよびH^-を用いた加速イオンビーム注入 3)ab initio分子軌道法による光学スペクトルのシュミレーション 1)の実験は、[M(H2DAG)(HDAG)]鎖におけるMのd電子とTCNQ鎖のπ電子のエネルギィー準位の相対的位置を決定する上で貴重な情報を与えるものであり、鎖間の電荷移動量などこの系の基本的物理量を決定する上で重要な鍵となる。本年度はその予備実験を行ったが、その結果、d電子とπ電子に関わる信号の検出に成功した。しかし、まだ電荷移動量との対応までには至っていない。 2)のイオンビーム注入により物質変換の試みの実験は、今後の応用での新しい展開を計る上で重要である。予備実験においてイオン注入に成功した。プロトン注入により新たな水素結合が生成されたことは注目に値する。いま、その濃度と電気的挙動との相関関係を調べている。 3)では、これまでに行った半経験的分子軌道計算のデータを基にして、厳密な分子軌道計算を行なった。その結果、上記の半導体一金属転移について理論的な裏付けを得ることができた。
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