研究目的 非対称的なTTF誘導体ドナーの電荷移動錯体は金属的性質(有機金属)あるいは超伝導(有機超伝導体)を示し、重要視されているが、それらのドナーの有機溶媒への溶解度が小さいために、その良質な錯体単結晶が得難く、その研究の拡大を困難にしている。本研究においては硫黄及びセレンを含む比較的溶解度の大きい新しい非対称的なドナーを組織的に合成し、錯体合成及び結晶育成とそれらの物性評価を行うのが目的である。 方法及び結果 これまで、非対称TTF誘導体ドナーは以下のような試薬A、Bのクロスカップリング反応で合成されてきたが、目的の非対称なA-Bの他に、A-A、B-Bも得られ、収率の低下とA-Aの精製を困難にしている。 A+B → A-A、B-B、A-B そこで、AとBとしか反応しない系(ノンカップリング反応)で非対称ドナーが生成する方法を考案し、多数の新しいドナーが得られた。一例を示すと、 この錯体のなかにはには室温の伝導度が約10^2S/cmのものも得られている。現在、物性研究を進めている。
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