研究概要 |
f-電子系の近藤半導体,メタ磁性,非BCS超伝導の機構解明が本重点領域の3大課題であり,筆者らは公募研究という立場上,新物質の探索に重点をおいて上記の問題に寄与する事が期待されている.申請書の計画に則り,本年度はトリアークおよびフラックス法を併用した近藤半導体の物質探索および超伝導体の検分をおこなった.前者に関しては本年度はε-TiNiSi型結晶構造に絞り,他の構造の探索に関しては別の機会に譲る.当然の事ながらCe化合物に限定する理由はなく,Euなどのニューフェイスにも焦点を当てた. 後者に関しては,現在研究中の磁性半金属及びUPd_2Al_3に着目した. A)近藤半導体 既に存在が報告されているEuPd(Pt)Sbの詳細な実験に加えEuNiSbの探索及EuTSn(T=Cu,Ag,Au)の作成を試みた.期待通りの結晶構造をとるか否か,さらにはf-電子の価数揺動を伴った近藤半導体になるか否かが新物質探索の醍醐味である.結果としてEuNiSbは存在しないがEuCu(Ag,Au)Snはε-TiNiSi型構造を採ることが新たに判明した.EuPdSbは比熱,抵抗,帯磁率共に12.2,17.5Kに異常を示す.しかし近藤半導体にはなっていない.Eu化合物ではEuの価数が温度と共に変化(降温と共に価数が増加)することがしばしば観測されている[EuPdAs(P),etc].EuAuSn,EuAgSn,EuCuSnで異常な価数変化が観測されないだろうか.詳細な実験が進行中である.Ce化合物では古くから知られている様に,CeNi(Pd,Pt)Snがε-TiNiSi型構造をとる.CeRhSbも同じ構造を採ることがインドTata研究所によって数年前に報告された.一般論としてCe化合物に於いては高圧下,あるいは構成元素を周期表で"右上方に進路を取れ"(Pd→Ni,Sn→Sb)ば価数揺動が増幅される.我々はCeRhSb系に適用してCeIrSb(Bi),CeRhBi,CeRhAs及びその周辺の試料の作成を試みた.その結果CeRhAsが本重点領域研究の目指す近藤絶縁体(E_g〜60K)である事が判明した.これは,本研究の最大の成果である. B)超伝導 我々が過去に作成した新旧の試料でHe^3温度領域の実験をスタートさせている.筆者にとって全く未経験の分野であり,また極く僅かの超伝導体パスの存在が実験結果に大きな影響を及ぼす.現在の所,PrPtBi(トリアーク,Pbフラックス共に)が0.3K,Ce_3Au_3Bi_4が2Kで超伝導を示す.しかしいずれもBiを含み結論をだすにはさらに実験が必要である.Bi自身は常圧では超伝導にならず2〜3万気圧の圧力下でT_cが〜4Kになる.PtBi(T_c〜1.24K),PtBi_2(T_c〜0.2K)Au_2Bi(T_c〜1.84K)などの影響を検討中である.PrPtBiと同じトリアークで作成したCePtBiは超伝導にはならない.UPd_2Al_3は超伝導と磁性が共存する系であり,我々とドイツとの共同研究でf電子を遍歴として取り組んだバンド計算でフェルミ面が見事に説明できることを明らかにしウラン化合物の磁性解明に大きな光明を与えた.
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