我々は、典型的な稀土類化合物として知られているRB_6(R=La、Ce)の(110)単結晶表面とファイリングによってえられる多結晶清浄表面について、R3dXPS、R4d-4f共鳴光電子分光実験をおこなった。 ファイリングによってえられた清浄表面の実験結果からは、これまでに知られていた価電子帯光電子スペクトルの構造が、表面の酸化によるものであること、4f電子状態のスピン軌道分裂が約260meVであることを見いだした。また、CeB_6(110)単結晶表面で測定した価電子帯光電子スペクトルでは、従来から知られている4f電子による2ピーク構造の他に、結合エネルギー1.5eV付近に新たな構造をみいだした。この構造はCeB_6(110)表面固有のものであり、この表面準位がCe4f電子状態に起因するものであると考えられる。一方、LaB_6(110)表面のLa4d内殻電子励起しきい値付近での価電子帯スペクトルでは、表面準位であると同定されたスペクトル構造に共鳴増大があることを初めて見いだした。Laは、基底状態では4f電子を持たないため、スペクトルの強度変化は光電子励起の終状態における多電子効果であり、LaB_6表面準位が4f成分を持っていることを示している。
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