研究概要 |
我々の目的はSmモノカルコゲナイド(SmS,SmSe,SmTe)の示す金属-絶縁体転移(以下「M-I転移」と称す)をスペクトロスコピーの観点から追跡することである。即ち、圧力と共に半導体的性質が金属的性質に変わる様子を「エネルギーギャップのつぶれる様子」から明らかにしたいと云うのが本研究の目的である。しかしこの実験を行うには圧力発生器としてダイヤモンドアンビルセルを用いた遠赤外領域での高圧力下分光実験を行わなければならないがこれが難しい。そこで我々はこの科学研究費の補助で作成したダイヤモンドアンビルを用いるとともに光源として我々のグループが分子科学研究所と共同で開発した赤外放射光を利用することで実験を可能にした。現在得られた最高圧力は20万気圧で、これは遠赤外領域での発生圧力としての世界最高記録となっている。 SmTeのギャップのつぶれ方には次の2通りあろうと予測される。 1.水素の金属化に見られる場合。圧力に応じてギャップが小さくなって行きついに光が全く通らなくなる(金属化)。2.フェルミ順位近傍に存在する4f電子順位が圧力によって不安定になって次第にふぇるみ順位に接近し、ついには横切って伝導帯にキャリヤ-を供給する場合。光でみると先ず伝導帯のキャリヤ-によって遠赤外の光がブロックされることになろう。 SmTeの場合にこの2つのどちらかはっきりさせるため光の透過率を調べた。先ず常圧での遠赤外領域での反射及び透過スペクトルを測定し、絶縁体特有のフォノンによる残留線バンドを確認した。その後圧力を加えた状態で透過スペクトルを測定したところ常圧スペクトルに比べ約4GPaまで圧力を加えると透過率が急激に減少し、ほぼ光が通らなくなることを見いだした。即ち、この研究で目的とした金属-絶縁体転移がはっきりと観測できることが分かった。高圧力下での実験は現在進行中でまだ最終的な結論が得られていないが本研究で当初目的とした高圧力下での遠赤外実験が可能になった。ギャップがどちらからつぶれて行くのか更に明確に汁ためには観測領域として可視から遠赤外領域までのより広いエネルギー領域をカバーしなければならないことが分かった。それらは現在計画中である。
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