従来の電子構造計算プログラムを用いて、UPt3やLaAgの電子構造とフェルミ面を求めた。UPt3は既に多くの計算結果が出版されているが、dHvA信号の同定に関して問題点も指摘されていた。今回は横磁気抵抗等の新しい実験結果が得られたので、詳細な計算と実験事実との比較検討を行い、従来のフェルミ面解析の問題点を含めて整理した。結果の一部は実験グループとの共同で投稿準備中である。LaAgはCeAgと共に最近詳しいdHvA効果の実験が行われたので、詳細な計算を行い、dHvA振動数の角度依存性に関して実験結果との非常によい一致を見た。結果は投稿準備中である。この他にも、PrPb3の参照系として、LaPb3とLuPb3のフェルミ面を求め、フェルミ面の解析を通じ、LuPb3の方が参照系として適切であるという結論を得た。 強相関系の重い電子の起源を明らかにする目的で、周期的アンダーソン模型の2次の自己エネルギーを具体的な電子構造に基づいていくつかの物質で計算を行った。計算機資源の制約のために現在は波数依存性のない計算に留まっているが、有効クーロンエネルギーを5eVとする事でCeSn3、CeCo2、CeRh2、CeRu2の質量増強因子の違いを説明する事が出来た。現在、論文投稿に向けて結果をまとめている段階である。 FLAPW法の改良として、非球対称な基底関数を用いた計算プログラムの開発も行っているが、数値計算上の問題点があり、現在のところプログラムのテストを行っている段階である。この他、磁気秩序状態の計算に向けて、空間群の既約表現のプログラムの総合的な改良も行った。
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