半導体量子構造における輻射場の量子制御

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06245103
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 山西 正道 広島大学, 工学部, 教授 (30081441)
• 研究分担者: 上田 正仁 広島大学, 工学部, 助教授 (70271070) ; 石原 照也 広島大学, 工学部, 助教授 (60168250) ; 清水 明 東京大学, 総合文化研究科, 助教授 (10242033)
• キーワード: 自然放出光制御と発光素子 / 量子閉じ込めシュタルク効果 / サブポアソン光 / 非平衡メゾスコピック系 / 励起子超放射 / 自然量子井戸 / 分布帰還型微小共振器 / 少数光子系の量子制御

研究概要

(1)電子・光子系量子制御による量子半導体光デバイス(山西):a)電流注入および電界印加の両方の機能を有し、電圧による発光強度や放射パターンの変調が可能な,AlGaAs系一次元微小共振器自然放出発光素子を実現した。c)市販のAlGaAs系半導体発光ダイオードを用いて,室温においてこれまで最高の100MHzにわたるサブポアソン光の発生を示すとともに,ノイズ抑制の遮断周波数の一般的な表式を導いた.d)多重連結したダイオード発光ダイオードによって定電圧源駆動でのサブポアソン光発生を示し,この場合のノイズ抑制量と対応する直列抵抗との関係を明らかにした。e)単一ダイオード,定電圧源駆動においてもサブポアソン光が発生される機構を指摘した.
(2)低次元電子系と量子化された電磁場の相互作用の理論(清水):メゾスコピック系の非平衡状態の理論を定式化し,多体相互作用で久保公式が破綻することを指摘した。また、電子溜とトンネル結合した電子系の超放射について、発光強度が大きく振動することを予言した。また、励起子系の有効ハミルトニアンをミクロな理論から導き、従来の理論に誤りが多いことを示すとともに、実験結果のミクロな説明を与えた。また、相互作用するボゾン系の凝縮を論じ、マクロなオーダの形成過程を明らかにした。
(3)自然量子井戸における自然放射光の制御(石原):分布帰還型共振器構造をもった基板上の(C6H5C2H4NH3)2PbI4およびPbI2薄膜の透過および発光特性を調べた。前者に比して後者は励起子振動子強度が小さく、低温においてのみポラリトン効果が観測できる。共振器効果によって生じる吸収は局所場を反映してグレーティングの溝の方向に強く偏光している。透過測定において見いだされるポラリトンの分裂幅は導波路への閉じ込め係数が20%ほどであると考えると、定量的に理解出来る。
(4)量子化された電子・光子系による非古典光発生の理論(上田):位相あるいは光子統計が制御された少数光子数状態を、スクイズされた原子集団から発生する方法を提案した。原子集団のダイポールモーメントの量子統計的情報が、発生された光子数状態に忠実にコピーされることが見出された。少数光子数状態を制御できる度合いは、スクイズされた原子の数とともに増大することがしめされた。

研究成果

• [文献書誌] R.Shimano: "Nonlinear optical response of exciton-microcavity coupled system in weak and intermediate coupling regime" J.Luminescence. Nos.72-74. 297-299 (1997)
• [文献書誌] J.Abe: "Observation of the collective Coulomb blockade effect in a constant-current-driven high-speed light-emitting diode" J.Opt.Soc.Am.B. Vol.14,No.6. 1295-1298 (1997)
• [文献書誌] G.Shinozaki: "3dB Wideband Squeezing in Photon Number Fluctuations from a Light Emitting Diode" Jpn.J.Apple.Phys.Vol.36,Pt.1,No.10. 6350-6352 (1997)
• [文献書誌] M.Kobayashi: "Wide-band suppression of photon-number-fluctuations in a high-speed light-emitting-diode driven by a constant-current source" Appl.Phys.Lett. Vol.72,No.3. 284-286 (1998)
• [文献書誌] T.Brandes: "Oscillatory behavior of a superradiating system coupled to electron reservoirs" Phys.Rev.Lett.Vol.80 (to appear). (1998)
• [文献書誌] H.Fujisaki: "Quantum Langevin equations for semiconductor light-emitting devices and the photon statistics at a low-injection level" Phys.Rev.A. Vol.57(to appear). (1998)
• [文献書誌] A.Shimizu: "Interacting One-Dimensional Electrons Driven by Two-Dimensional Reservoir Electrons" Physica B. (to appear). (1998)
• [文献書誌] A.Shimizu: "Theory of Electron-Photon Interaction" T.Ando et al.eds.,"Mesoscopic Physics and Electronics" (Springer). 140-155 (1998)
• [文献書誌] 清水 明: "非平衡統計物理学の舞台としてのメゾスコピック系" 物性研究. (to appear). (1998)
• [文献書誌] T.Fujita: "Tunable polariton absorption of distributed feedback microcavities at room temperature" Phys.Rev.B. (to be published). (1998)
• [文献書誌] Hiroki Saito: "Quantum-Controlled Few-Photon State Generated by Squeezed Atoms" Phys.Rev.Lett.vol.79. 3869-3872 (1997)
• [文献書誌] 清水 明: "物理学のすすめ(塚田 捷 編),第IV章" 筑摩書房, 163-202 (1997)