発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)といった半導体発光素子は、注入する電流の揺らぎを小さくするこにより、サブポアソン光を発生することが出来る。しかしながら、これまでに行われた実験では、平均光強度が数mW程度と比較的強く、微弱な領域での振る舞いはあまり調べられていない。微弱な領域での振る舞いを調べることは、(1)ショット雑音が信号対雑音比に及ぼす影響は、微弱な領域で顕著になるので、応用上の観点から重要である。(2)光のアンチバンチングのような非古典的な効果が顕著に現われるので、サブポアソン光の量子論的な性質を明らかにするという点で興味深い。我々は、LEDには元々しきい値が無いので、微弱なサブポアソン光の発生が可能なのではと考え、その可能性を実験的に検証した。これまで、サブポアソン光の実験に用いられてきた典型的なLEDでは、室温では、光強度が小さくなるに従って、すべての周波数で同じようにサブポアソン化が悪化した。これは、室温では、駆動電流が小さくなるに従って、LEDの発光効率が低下するという事実から容易に理解される。発光効率の低下は、飽和を起こすような非発光過程の存在により説明できる。一方、窒素温度では、発光効率の低下は起こらないが、雑音レベルの観測からは、高周波側でサブポアソン化が悪化した。以上のように、室温と窒素温度のいずれの場合でも、光強度を弱くすると、サブポアソン化の悪化が起こった。しかし、従来よりも3桁程度強度が弱い場合にもサブポアソン的な雑音を観測することが出来た。これらの現象から、半導体素子内でのキャリアーの振るまい、特に、束縛準位の存在と、その飽和について推測することが出来た。また、高周波数特性の良いLEDを用いた場合には、広い帯域にわたって、量子雑音を半分以下に抑圧することができた。これは、LEDによる光子数スクイージングでは、最も優れた値である。
|