光の弱局系での新しい量子光学現象を探る目的で研究計画に従って以下の研究を行った。 1、光の弱局系として、粒径が光の波長程度のポリスチレンラッテクス及び、酸化チタン微粒子を水のなかに分散させた系を作製した。特に酸化チタン微粒子については、アルコキシル法とその後の熱処理を通して、アモルファス状態のもの結晶化したものなどが作れることがわかった。 2、光の弱局系に置かれた原子・分子の分光学的性質は著しく変化を受けていると考えられる。この様子を探る目的で、上記1、の弱局系に有機色素分子を分散させた。有機色素分子の種類によって、(1)分子がポリスチレンラッテクス表面に吸着されるもの、(2)ラッテクス表面と反発して水のなかに分散するもの、(3)その中間のものがあることがわかった。 3、チタンサファイアレーザーとストリークカメラから構成される時間分解分光システムを用いて、上記1、2の色素分子の発光寿命を、(1)色素の濃度、(2)色素の種類、(3)微粒子の濃度、(4)微粒子のサイズ等を系統的に変化させながら詳しく調べた。 4、この結果、微粒子の(1)粒径と(2)粒子の間隔が光の波長と同程度になると、色素の寿命に数10ピコ秒程度の速い緩和が現れることがわかった。 5、この速い緩和の現れる様子は、(1)粒子間隔とミ-共鳴との関係、(2)粒径の違いによる吸着表面積の違いに関係づけられることが明らかになり、速い緩和の起源は強い散乱体の中で色素分子間の双極子相互作用が増強されている結果であることがわかった。
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