1.核形成前のDNA複製開始を決定するクロマチン結合タンパク質の同定 S期特異的にクロマチンへ結合するタンパク質を同定するため、以下の実験を行った。ツメガエル卵より膜成分を除いた分画を、実験補助により大量に調製した。DNAをS期およびG2期様活性を有する抽出液分画でインキュベートし、DNA結合タンパク質を電気泳動法により分離し、S期特異的にDNAに結合するタンパク質として、分子量11万、10万、9.2万(p110、p100、p92)を同定し、これらタンパク質に対する抗体を作成した。抗p100抗体を用いた免疫沈殿実験により、p110、p92はp100と会合していること、これらのタンパク質は核形成前にDNAに結合し、複製開始反応に必須であることを明らかにした。さらにこれらのタンパク質は、核形成後の複製反応開始によってクロマチンから遊離することを見出した。他方、DNA鎖の伸長に必要なポリメラーゼ等の一群のタンパク質因子は、複製反応時にクロマチンに結合しており、本研究で同定したタンパク質が複製開始に関わる重要な因子であることがわかった。さらにツメガエル卵mRNAより作成したcDNAライブラリーを抗体を用いてスクリーニングを行い、本研究で同定したタンパク質が酵母で複製開始反応に必要とされているMCMファミリーに属することがわかった。 2.DNA複製開始に関わるクロマチン構造 1で同定したタンパク質が、どのようなクロマチン構造形成に関わっているかを明らかにするため、はじめに単位ヌクレオソームあたりのタンパク質結合量を測定した。S期特異的にクロマチンへ結合しているp100およびコアヒストH4のコピー数を測定した結果、p100・1分子あたりH4約30分子、従って、約15ヌクレオソームあたり1分子のp100が結合していることが示唆された。現在p100が結合しているクロマチンがどのような高次構造を有しているか検討している。
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