タンパク質の核移行に関与していると考えられる核膜タンパク質のうち、本年度は主にラット肝の核膜孔タンパク質と、核移行シグナル結合タンパク質NBP60についてさらに研究を進め、次のような結果を得た。 まずラット肝核膜より、糖鎖を持つ核膜孔タンパク質と考えられる144kのタンパク質を精製し、120kと86kのタンパク質も部分精製した。これらのタンパク質は、いずれも細長い棒状の分子であることがわかり、この分子形は核膜孔に特異的に存在する一群の糖タンパク質に共通の性質であることが示唆された。これらの結果は、J.Biochem.に発表した。またさらに糖鎖がほとんどないか、まったくない核膜孔タンパク質と考えられる50kと39kのタンパク質もラット肝核膜より精製しその性質を調べ、Life Sci.Adv.に発表した。 核移行シグナル結合タンパク質NBP60に対する抗体を用い、細胞分画法と組織化学的方法でNBP60の細胞内局在を調べたところそのほとんどが核膜孔に局在していることが示されたことから、このタンパク質がタンパク質の核移行に関わっている可能性がさらに高くなった。またこのタンパク質は、細胞の分裂周期にしたがって、他の核膜孔タンパク質と同様に核膜孔に局在したり、溶けて細胞質全体に広がったりすることが明かとなった。 現在組み換えDNA法でNBP60の構造解析を進めている。
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