研究概要 |
老人斑(SP),血管アミロイド(CAA)におけるAβN,C末端の存在様式を明らかにすることを目的に,AβN,C末端の断端,修飾特異的抗体を用いてAD,Down症(DS)脳を免疫組織化学的に検索した。AD(弧発例15例とAPP717変異FAD例5例)大脳皮質,基底核,小脳およびDS16例(年齢31-64歳)の前頭葉ホルマリン固定パラフィン包埋標本を主な対象とし、次の抗Aβモノクローナル抗体を用いた。BC05(Aβ42(43)特異的),BA27(Aβ40特異的),BS85(抗Aβ25-35,Aβ38,39,40,42,43と同等に反応),BAN50(抗Aβ1-16,AβAspl,7とAβisoAspl,7よりも20倍強く反応),BAN52(抗Aβ1-16,AβisoAspl,7とBAN50よりも強く反応),Ab9204(抗Aβ1-5,AβisoAspl-5と反応しない)。AD,DSともにほぼすべてのSPがAβ42(43)陽性を示し,一部の老人斑のみがAβ40陽性を示した。ADでは平均して約1/3弱のSPがAβ40陽性となり,ことにアミロイドコアを有する定型的老人斑が高率に陽性を示した。AD,DSともにびまん性老人斑(DP)はAβ42(43)であったがAβ40陰性であった。DSでは50歳以下の若年群ではSPのAβ40陽性率は6.3%であったが,50歳以上の高齢群では42%に増加した。大部分のCAAはAβ42(43),Aβ40両者とも陽性を示したが,後者が強い陽性を示すことが多かった。抗C末端抗体とN末端抗体の反応パターンを連続切片上で比較すると,3種の抗N末端抗体はAβ40陽性斑と最も強く反応する傾向が見られたが,AβisoAsplと反応しないAb9204に陽性を示すSPが最も少なく,DPは全く染色されなかった。これに対しAβisoAspl,7と最もよく反応するBAN52はDPを含めてほとんどの老人斑を陽性に染色した。C末端については,Aβ42(43)が老人斑に初期から蓄積する主要分子種であり,Aβ40は遅れて何らかの機序により出現するものと考えられる。DPはAβAsplの抗原性を有さないため,初期にSPに蓄積するAβのN末端はtruncateされている可能性もあるが,Aspl,7がisoaspartyl化されたAβ分子種はDPにも存在し,後期に至って一部のSPにstandard formのAβ1-40が蓄積し始める可能性が考えられる。
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