研究課題/領域番号 |
06255105
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研究機関 | (財)東京都神経科学総合研究所 |
研究代表者 |
木村 純子 (財)東京都神経科学総合研究所, 微生物学・免疫学研究部門, 主事研究員 (20142151)
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研究分担者 |
長嶋 和郎 北海道大学医学部第二病理学教室, 教授 (50010377)
保井 孝太郎 (財)東京都神経科学総合研究所, 微生物学・免疫学研究部門, 参事研究員 (90073080)
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キーワード | HIV脳症 / ニューロン死 / HIV-1gp120 / サイトカイン / ニューロン回路網 / 培養脳細胞 |
研究概要 |
これまで我々は、成熟期のラット大脳皮質培養系を用いて、gp120がオリゴデンドロサイトに機能障害を起こして、ミエリン形成を阻害することを報告してきた。今年度は、幼若期のラット大脳皮質培養系を用いて、gp120がニューロンへ及ぼす影響について主に調べた。 幼若期において、低細胞密度の条件下では、gp120添加により数日内に顕著なニューロン死が起きた。このニューロン死は、培養1-3日のニューロンで認められたが、7日以降ではもはや認められず、ニューロンの成熟度に相関を示したが、gp120とニューロンの結合とは必ずしも一致しなかった。またHIV脳症に関与していると考えられているサイトカインの一種PAFが、ニューロン死を起こすことも確認した。両者の相互関与などは不明であるが、両者のニューロン死の機序を今後比較検討する予定である。 また細胞密度を上げてニューロン死を起こしにくくした条件下で、gp120を添加してさらに7-9日培養し、形成されたニューロン回路網の電気活動を、Fura2を用いて細胞内Ca^<2+>のモニタリングにより解析した。その結果、gp120添加により、ニューロン発火活動に伴う,ニューロン細胞内Ca^<2+>のsynchronous oscillationの頻度が低下し、発火しているニューロン数も減少した。 以上の結果から、gp120は分化程度、培養条件の異なる神経系細胞において、種々の異なる神経障害性、即ち脱髄やニューロン死、ニューロン回路網への障害性をもつことが明らかとなり、HIV脳症においてgp120が複数のメカニズムを介して関与している可能性が示唆された。今後これらの障害性が起きるメカニズムを、分子レベルで探っていく予定である。
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