HIVに対するアンチセンス療法は塩基配列特異的なものと塩基配列非特異的なものをこれまで報告してきた。既感染細胞では5日間のアッセイでは塩基配列特異的なウイルス産生抑制がみとめられたが、更に培養を長期にした場合について検討した。5日間のアッセイではrevに対するアンチセンスのみが有意に培養上清へのウイルス産生を細胞毒性なしに抑制した。しかし、更に11週間フォスフォロサイオエイトオリゴマーの存在下で培養を続けたところ、細胞膜上のgp120(HIVエンベロープ)の出現が著明に低下し、ウイルス産生が著しく抑制されていることが見いだされた。長期にわたる実験のため細胞一個あたりのウイルス産生量を把握するため、モノクロナール抗体を用いてFACSにて検討を行なった。その結果、5日間の短期では塩基配列特異的に認められていたものが、長期培養では塩基非特異的なウイルス産生抑制が認められた。更に、驚くことにはオリゴマーを除去した培養液で更に培養を続けても、その抑制効果は消失せず、ほとんどウイルス産生は消失したままであった。 この意外な塩基配列非特異的抗HIVウイルス効果は所謂“Selective Toxicity"ではないかと考えられた。これらの抑制されたウイルス産生はPCRでそのゲノムをチェックしたところ標的となったrevには大きな欠失はなく、非常に小数のウイルス低産生細胞がフォスフォロサイオエイトオリゴマーに対して比較的に増殖が抑制されず、最終的に“Selection"がおこったものと考えられた。
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