研究概要 |
昨年度から引き続き,本重点領域研究では,現在臨床応用を目指して開発が進められている,非核酸逆転写酵素阻害剤のHEPT誘導体について,薬剤耐性ウイルスの試験管内樹立と,そのウイルス学的および分子生物学的解析を試みた。その結果として,得られた耐性ウイルスの薬剤に対する感受性では,HEPTを含むその他の非核酸逆転写酵素阻害剤に対して,全て交叉耐性を示すが,AZTやDDIのような既存の抗AIDS核酸誘導体に対しては,全く耐性を示さないことが明らかになった,更にわれわれはこれらの結果を基にして,HEPT誘導体とAZTとの併用療法の可能性について検討した。HEPT誘導体の一つであるMKC-442と同時にAZTを用いると,継代を60日以上続けてもウイルスの増殖は認められず,併用による耐性ウイルスの誘導は非常に難しいと思われた。AZT耐性株を用いて,MKC-442耐性ウイルスの誘導を試みると,MKC-442およびAZTの両方に耐性を示すHIV-1を誘導することが可能であったが,このウイルスのAZTに対する感受性は,もとのAZT耐性株と比較してかなり回復していた。これらの結果は,in vivoにおける両者の併用療法の有用性を示唆するものと考えられる。このウイルスの逆転写酵素におけるアミノ酸の変異を検討すると,通常はMKC-442耐性株は親株と比較してTyr^<181>→Cysの変異が共通して認められるが,AZT耐性HIV-1から誘導したMKC-442耐性株にはTyr^<181>→Cysの変異は見られず,その他のアミノ酸変異がMKC-442に対する耐性に寄与していると思われた. 以上の研究結果を含め,研究代表者は今年度の本重点領域研究においてなされた成果を,国際核酸ラウンドテーブル(ベルギー国)および抗ウイルス化学療法研究会において発表するとともに,数編の欧米科学雑誌において公表した.
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