研究概要 |
我々はAIDS遺伝子治療の臨床応用に向けてCD4陽性細胞に特異的に高い効率で遺伝子が導入できるHIVベクターの開発を行っている。今回の研究では、臨床応用に向けて安全性の高い改良型HIVベクターを作製し、それを用いてTARデコイ、自殺遺伝子(単純ヘルペスチミジンキナーゼ(HSV-TK))等の抗HIV遺伝子による遺伝子治療の検討を進めた。1)ベクタープラスミドとパッケイジングプラスミドの組換えによる野生型ウイルス発生の可能性を除くためgag,pol発現ベクターとenv発現ベクターに分割したパッケイジングプラスミドを作製したところ、産生されたベクター量は非分割パッケイジングプラスミドを用いた場合の約1/10-1/100であった。2)gag遺伝子の開始コドンATGをATCに、スプライシングシグナルTGGTをTCGCにそれぞれ変異させ、組換えが起こってもgag遺伝子が発現しないようにしたベクタープラスミドを作製したところ、ベクターの力価は約三倍に向上した。3)HIVの遺伝子発現に不可欠なTATとTAR配列の結合を阻害するTARデコイは有力な抗HIV遺伝子であるが、その発現はHIVベクターの産生をも抑制する可能性があるため、TAT非依存性のCMVとHIV-LTRのハイプリッドプロモーターを持つHIVベクター産生系を開発し、現在tRNAのpolIIIプロモーターと連結したTARデコイをもつHIVベクターを作製し抗HIV活性の検討を行っている。4)HIV-LTRに連結して、TAT依存性に発現するHSV-TK遺伝子をもつHIVベクターを作製し、HeLa,H9などのヒト細胞株にHSV-TK遺伝子を導入し、HIV感染実験を行った。HSV-TK遺伝子はTAT依存性に発現し、ガンシクロビールを投与してもHIVが感染した場合のみ効果を示した。現在HIV増殖抑制効果について検討中である。
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