1)生体内でのesgの転写抑制能 前年度は培養細胞において、esg蛋白による転写抑制が生体内で起るかを成虫の感覚毛形成をアッセイ系として調べた。翅成虫原基ではAcとScが数細胞から成るグループ(proneural cluster)で発現し、Ac/ScとDaの転写活性化能に依存して単一の細胞に限定されるようになる。この細胞が感覚母細胞として感覚毛に分化する。esg蛋白をDa/Scの発現領域で強制的に発現させると、esgの発現量依存的に剛毛形成が阻害された。またDNA結合ドメインの変異蛋白を同様に発現させるとDNA結合能の程度に応じた感覚毛形成阻害が見られた。in vitroの結果と考え合わせると生体内でもesgはbHLH蛋白の活性を競争的に阻害しうるものと考えられた。 2)cdc2は2倍体の維持に必須である。 Dmcdc2はM期の進行に必須なカイネースをコードするがendoreplicationには必要とされない。Dmcdc2の変異体の表現型を幼虫で調べてみると、すでに報告されている通り成虫細胞の増殖が阻害されていた。加えて増殖を停止した細胞は核が巨大化しており、多倍体化していると考えられた。よってDmcdc2はM期の進行だけではなく、G2期においてS期の開始を阻害している事が明かとなった。細胞周期の制御因子であるDmcdc2の変異体がesgと同じ表現型を示した事は、esgがcdc2の活性を制御している可能性を強く示している。
|