研究概要 |
(1)ショウジョウバエPCNA遺伝子発現制御エレメントの個体レベルでの解析: PCNA遺伝子のプロモーターとその上流域を含む種々の配列をlacZ遺伝子と連結し,P-エレメント法により百数十系統の遺伝子導入ハエを樹立し,lacZ発現の変化を調べることにより,各発生段階での発現に必要な制御配列を明らかにした。成虫の卵巣における発現に必須であるのは転写開始点より上流86bp以内の基本プロ-モーターであり、DRE(PCNAおよびDNApolymeraseα遺伝子のプロモーター上流に存在する、共通の8bpのパリンドローム配列)はそれを増強する。初期胚での発現には、DREが必須となり、また幼虫期での発現には、DRE及びそのさらに上流50bpまでにある第2の調節配列(URE:upstream regulatory element)が必要であることがわかった。最近、このUREに特異的に結合するタンパク因子の検出にも成功している。 (2)マウスPCNAの構造と機能の相関:PCNAは最近種々のサイクリンやp21と相互作用することが明らかにされ、注目を集めている。in vitro 転写・翻訳系により作製したマウスPCNAの各種欠失変異体と、大腸菌で発現させたマウスDタイプ-サイクリンとGSTとの融合蛋白との結合能を調べた。その結果、261アミノ酸残基からなるPCNAのN-末端領域(2-64番)とC-末端領域(197-228番)にそれぞれ独立に機能する結合領域をマップした。興味深いことにこれらの領域は、哺乳動物からショウジョウバエさらに出芽酵母のPCNAにいたるまで、最もよく保存されている領域に相当している。
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