分裂酵母のMei2は、体細胞分裂周期から減数分裂過程への切り替えを行う減数分裂制御因子と考えられる。Mei2と遺伝的に相互作用する因子を検索した結果得られたsme2遺伝子は、構造解析の結果RNA遺伝子であることが判明した。遺伝子破壊実験によりこのRNAのコード領域の一部をゲノム上から欠失させると、細胞は減数分裂を完全に停止する表現形を示した。我々は、この減数分裂過程(meiosis)に必須な500ntほどの新規のRNA分子をmeiRNAと命名した。 Mei2のアミノ酸配列を慎重に検討したところ、Mei2タンパク質のN末端側とC末端側に二つのRNA結合モチーフ(RRM)が見つかった。大腸菌に作らせたMei2タンパク質と、cDNAからin vitroで合成したmeiRNAを用いてゲルシフトアッセイを行った結果、Mei2とmeiRNAの直接的かつ特異的な相互作用が確認できた。さらにMei2を特異的に認識する抗体を用いて、減数分裂を誘導した細胞の抽出液を免疫沈降したところ、Mei2タンパク質とともにmeiRNAも共沈してくることがわかり、減数分裂過程でMei2とmeiRNAが複合体を形成して機能していることが結論された。 Mei2は、減数分裂過程で減数分裂前DNA合成の開始とその後の減数第一分裂の開始の、少なくとも二つのポイントで必須の機能を果たしている。meiRNAの遺伝子破壊株は、減数分裂前DNA合成にはなんら支障はなく、減数第一分裂がブロックされていた、以上の生化学的および遺伝学的解析から、Mei2-meiRNA複合体は、減数第一分裂の開始に必須の機能を果たしていると考えられる。一方、Mei2のRNA結合活性は、減数第一分裂の開始のみならず減数分裂前DNA合成の開始にも必須であることが判明し、この時期にはMei2はmeiRNA以外の別のRNA分子と相互作用しながら機能していることが推論された。
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