U2、及びU6核内低分子RNAは、真核生物の細胞核中に存在する一群の代謝的に安定な低分子RNAであり、mRNA前駆体のスプライシング反応に関与していると考えられている。我々は、U6及びU2RNA遺伝子の構造解析から、これらの遺伝子が蛋白質をコードしていない遺伝子であるにも関わらず、典型的なmRNA型のイントロンを含むことを明らかにしてきた。さらに、それらのmRNA型イントロンの存在部位の解析から、U6とU2RNAの間に従来知られていなかった第3の塩基対合領域が存在している可能性を示し、U6/U2RNA複合体がスプライシング反応の触媒因子であるという仮説を提唱した。本年度では、mRNA型イントロンの存在がU6及びU2RNA遺伝子に特異的なものであるかについて解析した。酵母Rhodotorula hasegawaeのU1、U4、U5RNA遺伝子をクローニングして解析したところ、U1遺伝子に1個、U5遺伝子に2個のmRNA型イントロンが見いだされた。スプライシング反応が開始される前にスプライソソームから遊離されるU4RNAの遺伝子にはイントロンは存在していなかった。興味深いことに、U1及びU5遺伝子に見いだされた全てのmRNA型イントロンは、これらの核内低分子RNAにおいて高度に保存されたスプライシング反応に必須な領域に存在していた。以上の結果は、核内低分子RNA遺伝子に見いだされたmRNA型イントロンは、何らかのmRNA前駆体からスプライシング反応によって切り出されたイントロンが、スプライシングの逆反応を経由して、触媒部位のコア構造を形成するU6/U2RNAを含めた各核内低分子RNAの機能的必須領域に取り込まれ、そのcDNAが進化の過程でゲノム内に固定された可能性を示唆している。
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