研究概要 |
【目的】システイン合成酵素(CSase)は高等植物の硫黄固定経路における鍵酵素であり、オルガネラ局在性が異なる3種のisozymeが存在することが知られている。演者らは、これらの生合成経路の分子レベルでの解明を目的としてCSase遺伝子のクローニングを進め、ホウレンソウからそれぞれ細胞質、葉緑体に局在するCSaseA、CSaseB、及びミトコンドリアに局在すると考えられるCSaseCのcDNAのクローニングに成功している。本研究では、CSaseB、CSaseCのトランジットペプチド(TP)配列のタンパク輸送機能を明らかにすることを目的とし、TP遺伝子のトランスジェニック植物での発現と解析を行った。 【方法・結果】CSaseB、CSaseC、ribulose-1,5-bisphosphate carboxy-lasc/oxyenase small subunit(rbcSS)のTP遺伝子配列とβ-glucuronidase遺伝子(GUS)とのキメラ遺伝子をタバコに導入し、GUSを発現レポーターとして解析を行った。トランスジェニックタバコ(CSB-TP/GUS、CSC-TP/GUS、SS-TP/GUS)再生体のオネガネラ分画を行い、GUS活性及びウェスタンブロット解析を行った。CSB-TP/GUS、SS-TP/GUSについては、緑葉の葉緑体画分に活性が局在していることが示された。pre-CSascBタンパクがTPにより葉緑体に輸送されることが明らかにされ、即ち、CSaseBに関する以前の生理学的な知見が再確認された。一方、CSC-TP/GUSについては、非光合成細胞(根)に高い活性が認められ、緑葉中の活性は分化に伴い減少した。
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