光合成の光化学反応は反応中心で効率良く進行するが、強光下などのストレスのかかっった環境では光失活が起こる。本研究では、系2反応中心に存在する葉緑体遺伝子にコードされた小型のサブユニットが光失活の防御に働いている可能性を調べるため、それぞれの葉緑体遺伝子を失活させた形質転換体を緑藻クラミドモナスから作出しその強光耐性を解析した。 まず、系2標品にゆるく結合するPsbKタンパクの遺伝子を失活させた形質転換体を作出した。得られた形質転換体は光合成的に生育できず、系2活性は検出されず、このタンパクは光合成機能に必須の成分であることが示された。タンパク組成を調べると、系2反応中心は野生株の10%以下にしか蓄積されず、反応中心複合体は葉緑体内で不安定になっていることが示された。 次に、系2反応中心に強く結合するPsbIタンパクの遺伝子を失活させた形質転換体を作出した。これは光合成的に生育するため、PsbIタンパクは系2活性に必須の成分ではないことが明らかになった。しかし、系2反応中心の量は野生株の10から20%程度に減少し、反応中心の安定性に必要な成分であることが示された。psbI形質転換体は光感受性が高く、この成分の光阻害防御への関与が示唆された。 最後に、植物の葉緑体ゲノムに保存されている読み取り枠ycf8が系2反応中心複合体の新しい構成サブユニットであることを明らかにした。このycf8を失活させた形質転換体は野生型と同様に光合成的に生育した。しかし強光照射下では野生株に比べ生育が悪くなり、このタンパクが系2反応中心を光阻害などから防御する役割を果たしていることが示唆された。
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