3頭の日本猿慢性標本を用いて、小脳核のほぼ全領域に微小電極を刺入し局所刺激を行った。誘発される眼球運動をサーチコイル法で記録し、後に解剖学的に刺激部位を同定した。その結果、小脳室頂核、中位核、歯状核にそれぞれ遅い眼球運動と速い眼球運動に関与する領域がともに存在することを見いだした。室頂核の最内側には、刺激開始後20-30ミリ秒後に水平もしくは垂直性の遅い眼球運動の誘発される領域があり、そのやや外尾側に刺激開始後30-50ミリ秒後に水平もしくは垂直性の速い眼球運動の誘発される領域があった。次に、前中位核の内側眼球運動の誘発される領域があり、後中位核の尾腹側には、刺激開始後20-30ミリ秒後に水平もしくは垂直性の遅い眼球運動の誘発される領域が存在した。歯状核の最頭側には、刺激開始後15ミリ秒後に垂直性の遅い眼球運動が誘発される領域があり、また尾側には、刺激開始後30-40ミリ秒後に垂直性の中間速の眼球運動が誘発される領域が存在した。以上の所見は、3つの小脳核がそれぞれ独立に、サッケードもしくは追跡眼球運動の制御に関与していることを示唆しており、小脳による随意運動制御が多重に作用していることが想像される。これらの結果を平成6年度の神経科学学会で発表したが、さらに学会誌に投稿する予定である。
|