卵成熟におけるcdc2の活性化に関わるキナーゼカスケードを明らかにするため、以下の2点を調べた。 1.cdc2活性化キナーゼMO15の卵成熟過程での挙動 キンギョMO15cDNAを大腸菌で発現させ、抗体を作製し、cdc2活性化酵素(T161リン酸化酵素)としてのMO15の機能を調べた。キンギョ未成熟卵抽出液には不活性型cdc2は存在するが、サイクリンBはない。これに大腸菌で作製したサイクリンBを入れると、cdc2のT161がリン酸化され、活性化した。この時、あらかじめ抗体でMO15を抽出液から除いておくと、サイクリンBを入れても、cdc2は活性化しなかった。しかし、ウサギ網状赤血球ライセ-トで作製したMO15を加えると、cdc2の活性化が回復した。キンギョcdk2を基質にした実験より、MO15は未成熟卵ですでに活性化状態にあることがわかった。また、そのタンパク量は卵成熟過程でほとんど変化しなかった。従って、キンギョ卵成熟誘起の最終的引き金になっているのはMO15の活性化ではなく、卵成熟過程でのサイクリンB合成開始であると結論できる。 2.cdc2の活性化に関わるMO15以外のキナーゼの発見とその化学的同定 キンギョとツメガエル卵成熟過程でMPFの活性化に関わるキナーゼ活性を47種の外来基質を用いて検索した。その結果、(1)MPF活性に先立ち上昇するエラスターゼをリン酸化する活性、(2)第1減数分裂と第2減数分裂の間で一時的に活性の上昇するフォスフォクレアチンをリン酸化する活性を発見した。(1)の活性はMPFの活性化に関わる可能性が、(2)については第1減数分裂と第2減数分裂の移行に関わる可能性があり、いずれの活性もこれまでに報告のないもので、その化学的実体の解明が急がれる。
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