動物細胞のG2期制御機構を明らかにするために、分裂酵母の変異株を宿主とした異種生物間遺伝子相補により、動物細胞のG2期制御遺伝子の単離・解析を進めている。ヒト線維芽細胞由来のcDNAライブラリーから、分裂酵母weel・mik1二重変異株を相補できる遺伝子WOS1を単離した。分子遺伝学的解析の結果、WOS1は、セリン・スレオニン型キナーゼをコードし、2種類(WOS1-A、B)存在する。AタイプのものはBタイプのものより2つのキナーゼドメインにはさまれた中央領域で、31アミノ酸短くなっており、しかも全く異なった配列に変化していることがわかった。このキナーゼは、以前、ラビットレティキュロサイトから単離されたheme regulatory inhibitor(HRI)と呼ばれているeIF2-αを燐酸化するキナーゼと最も高い相同性があった。このHRIは、ヘムの欠乏により活性化され、eIF2-αの燐酸化による蛋白質合成の停止に関与していると言われており、おそらくWOS1遺伝子は、この遺伝子のヒトホモローグとして考えられる。eIF2-αを燐酸化するキナーゼとして、出芽酵母のGCN2と呼ばれるアミノ酸の飢餓により活性化されるキナーゼが存在する。WOS1-Bは、HRIと同様にgcn2変異を相補する活性を有するが、WOS1-Bは、HRIと同様にgcn2変異を相補する活性を有するが、WOS1-AはGCN活性を持たない。WOSI遺伝子は、G0及びG2期で発現しており、Bタイプは、GCN活性を持つが、Aタイプは、GCN活性を持たないこと、更に、WOS1-A、B共に分裂酵母のG2期制御異常の変異を相補できることから、G2期においてはeIF2-αの燐酸化を介さない機構で機能している可能性が示唆された。
|