S期の開始および、S期終了とM期開始の制御に関わっているRCCI遺伝子は、真核生物中で良く保存されており、出芽酵母においても相同遺伝子SRMI/PRP20/MTR1の存在が報告されている。これらの変異のうち、prp20-1、mtr1-1、mtr1-3は、核内低分子量GタンパクRan/TC4の相同遺伝子GSP1/CNR1またはGSP2/CNR2の大量供給で抑圧され、srm1-1、mtr1-2は抑圧されない。これは、それぞれの変異遺伝子で欠損した機能が異なる可能性を示唆している。申請者は、既にsrm1-1を抑圧する変異ssr1-1を分離解析した。さらに、出芽酵母を使ってRCC1-Ranシステムに関わる遺伝子を分離するために、mtr1-2変異から抑圧変異を分離した。現在、約10^7細胞から12の劣性変異株を選択し解析中である。 分裂酵母においては、RCC1遺伝子の高発現が生育を阻害する。これに対する抵抗性温度感受性変異(ror)を分離し、その一つror1が第2番染色体のhis4遺伝子座から22.5cMの距離にあることが分かった。 また、2-hybrid法によるRan/TC4結合因子の検索は出芽酵母由来のライブラリー、分裂酵母由来のライブラリーの両方とも試みており、分裂酵母の方からRanBP1と相同なアミノ酸配列が認められた。RanBP1は、Ranに結合しRCC1に対してネガティヴに働く因子で、核膜孔タンパクの一つRanBP2もRanBP1に相同な機能ドメインを持ち、Ran/TC4に結合する。このcDNA断片が、RanBP1相同体のものかRanBP2相同体のものかいずれか明らかにするために、現在、詳細に検討している。
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