ユビキチン結合酵素(E2)の多様性とそれにより発現される特異的なユビキチン経路が種々の細胞機能制御に極めて重要であると考えられるが、これまでE2分子種の系統的探索はわづかに出芽酵母S.cerevisiaeにおいて、それもPCR増幅を主な方法として行われたものと、それの他生物種に於けるhomologue探索で得られたものが主である。そこでここでは分裂酵母S.pombeからその本来の機能を指標に検索を行った。大腸菌発現vectorを用いて作成したLibrary約20000個から、菌抽出液中で標識ユビキチン受容能を指標に約20のE2cDNAを分離した。その内の一つubcP4は細胞周期G2/M期での阻害が起こり、MPF活性を阻害したときと酷似した表現型を示すことが分かった。この遺伝子産物を枯渇させた細胞抽出液中ではMPF活性が低く、これに大腸菌で発現させたubcP4蛋白質を添加するとMPF活性が速やかに上昇したことから、cdc25やwee1遺伝子産物による制御とは別に、より直接的にMPF活性を抑制している蛋白質が存在し、ここで同定したものはその分解を担うユビキチン系である可能性が非常に高いと思われ、ubcP4のユビキチン化標的蛋白質がMPF inhibitorではないかと思わせる結果が蓄積してきている。G2期の制御に新たな局面を開く可能性を秘めたものとして今後のその解析が期待される。昨今、essentialな細胞機能に関わるE2遺伝子、蛋白質がいくつか同定されてきているが、本来ユビキチン系が担っている多様な細胞機能を考えると、今回は扱いやすさの点からS.pombeを用いたが、培養細胞をも含めて、更に機能特異的なE2を蛋白、遺伝子の両方から系統的に同定、分離することが必要であると思われる。
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