ヒストンH3キナーゼの細胞内の活性領域を同定するために、H3キナーゼでリン酸化されるヒストンH3(Ser10)のペプチドを合成し、うさぎに投与して抗血清を得た。その抗血清、H3P(Ser10)の特性について、Western blottingによって検索した結果、次のような点が明らかになった。 1。H3-P(Ser10)抗体はHeLa細胞のM期H3ヒストンを認識する。これによって、Ser10がH3のM期リン酸化サイトであることが証明された。 2。この抗血清は他のヒストンのセリンリン酸化とは全くクロスしない。僅かに、リン酸化H1とクロスするのみである。 3。HeLa細胞をオカダ酸で処理すると、H3(Ser10)リン酸化が増加し、クロマチンの凝縮の誘導と対応していた。これと反対に、低血清処理細胞ではこのリン酸化が低下し、クロマチン構造の"ひかん"を反映していた。 4。クロマチンの凝縮が見られるアポトーシス細胞(HL-60)では、Ser10のリン酸化は生じていなかった。したがって、アポトーシスではM期に見られるH3のリン酸化とH3キナーゼの活性化が生じていないことが分かった。 これらの結果を踏まえて今後、核及び染色体におけるH3キナーゼの活性領域につい解析する。
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