本研究により魚類培養細胞RBCF-1において蛍光灯の可視光処理により紫外線誘発DNA損傷とその修復をESS法とELISA法により定量した。その結果、紫外線損傷修復系が可視光処理により以下の点で多面的に制御されていることが明らかにされた。 1.CBD(ピリミジン2量体)を修復する光回復酵素は可視光により転写誘導されるが、過酸化水素処理でも同様に転写誘導が起こる。 2.CBD光回復酵素は細胞の増殖状態によっても調節されており、増殖阻害により誘導される。 3.可視光処理は紫外線誘発の(6-4)PD((604)光生成物)の除去修復を促進するがCBDの除去修復は変化しない。また、細胞にCBD光回復酵素遺伝子を過剰発現させても除去修復能には大きな変化は認められなかった。 4.(6-4)PDの除去修復誘導は転写や蛋白質合成の促進によるものではないことが示唆された。 5.(6-4)PDの光回復能も可視光や過酸化水素により促進される。 これらの結果より、紫外線損傷に対するDNA修復系の多面的な高次の調節機構が存在すること、および可視光により生じたラジカルが誘導のシグナルとなっていることが示唆された。今後、転写調節が行われているCBD光回復酵素遺伝子の上流調節領域の解析と関与する転写因子の同定、および蛋白質の活性化が示唆されている6-4光産物の認識蛋白質のゲルシフト法を用いた解析を進める予定である。
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