研究概要 |
相同組換えや組換え修復の反応中間体であるHolliday構造は,2分子の相同な2重鎖DNA間で互いの相補鎖を交換した構造をしている。我々は,大腸菌のRuvABタンパク質複合体がHolliday構造に直接作用しDNAの交差位置の移動(branch migration)を促進する酵素であること,また、RuvCタンパク質がHolliday構造を切断するHolliday構造解消酵素(resolvase)であることを明らかにしてきた。これらの研究を押し進めて,本年度は,以下の点について成果が上がった。 (1)RuvC resolvaseのX線結晶解析を行い,この酵素の立体構造を明らかにした。さらに多数のRuvCミュータントを単離して構造と機能相関を解析した。その結果,4つの酸性アミノ酸(Asp-7,Glu-66,Asp-138,及びAsp-141)がDAN鎖切断反応の活性中心を形成することを発見した。立体構造上これら4つのアミノ酸は比較的長く深い凹みの底部に位置する。この凹みは,結晶解析からDNA結合のインターフェースと予想されるが,我々の単離したミュータントのin vivoの解析もそれを示唆した。RuvCは2量体で活性をもつが,2量体形成に関与する構造やアミノ酸も明らかにした。 (2)ruvミュータントの細胞分裂や染色体分配について解析した。紫外線照射によりruvミュータントは,非常に長いfilamintous細胞になる(照射後2時間前後)。その細胞中染色体は,特定箇所に固まって局在していた。その後,通常サイズの細胞を放出するが,それらはほとんどすべて無核細胞であった。紫外線照射しない細胞集団中にも野性株に比べfilamentous細胞や無核細胞が多数存在していた。このことから,Holliday構造のプロセッシングは細胞分裂や染色体分配と密接に関与していることを示唆した。
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