哺乳動物など高等真核生物では減数分裂期に相同組換えが起こることはよく知られているが、分子レベルでの解析、特にそれに関与する酵素や遺伝子の存在についてはほとんど知られていなかった。しかし最近、大腸菌および酵母においてDNA修復、相同組換えに関与することが知られたいるRecAおよびRad51遺伝子のホモローグをヒトおよびマウスからクローニングした。この遺伝子のコードするタンパクの組織での発現を調べるために、マウスRad51タンパクに対する抗体を作成し、精製した後、免疫組織染色によりその分布を調べた結果、(1)精原細胞や精母細胞(2)卵胞上皮および成熟前の卵母細胞(3)胸腺未分化T細胞(4)脾臓胚中心(5)小腸陰窩(6)子宮内膜上皮のような細胞分裂の盛んな細胞で発現していることが明らかとなった。さらにこのタンパクはG1後期から細胞核内でみられるとともに、S期で濃くなり、M期では細胞質に拡散し、再びG1期にはいると分解することから有糸分裂時のDNA修復に関与し、突然変異による発がんを抑制することが示唆された。今後このような組換え修復に関与すると考えられるRad51遺伝子をターゲテイング法により欠損させたマウスを樹立し、突然変異の蓄積や発がん、免疫系細胞の分化、生殖細胞における配偶子形成にどのような影響を与えるかを解析し、その機能を明らかにする。
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