研究概要 |
本研究ではマウス・インターフェロン遺伝子転写調節因子-2(IRF-2)DNA結合ドメイン,マウスOct-3POU-h omeoドメインなどのDNA結合性の転写因子の溶液中での立体構造を核磁気共鳴法で決定し、DNAと複合体の解析も進めることによって、DNA塩基配列の認識機構を立体構造に基づいて明らかにすることを目的とした。 まずマウス・インターフェロン遺伝子転写調節因子-2(IRF-2)DNA結合ドメインについては、主鎖の殆ど全てと側鎖のかなりの部分の水素核、窒素核、炭素核のNMRシグナルの帰属を終了し、水素原子間の距離情報や、主鎖の2面角の角度情報などを収集して2次構造を決定した。その結果、このドメインは3本のヘリックス構造と4本のβストランドからなる反平行βシート構造を持つことが判った。興味深いことにアミノ酸配列のレベルでは殆ど相同性を示さなかったにも関わらず、IRF-2DNA結合ドメインは幾つかあるループ様構造を除けば大腸菌cAMP受容対蛋白質(CRP)、HNF-3、klaHSPなどと似通った2次構造パターンを示す。従って、IRF-2DNA結合ドメインはwinged helix DNA結合モチーフを持つ可能性があることが判明した。 マウスOct-3 POU-homeoドメインについては、主鎖・側鎖とも殆ど全ての水素核、窒素核、炭素核のNMRシグナルの帰属を終了し、水素原子間の距離情報や、主鎖の2面角の角度情報などを収集して立体構造を決定した。精度については主鎖の原子核についてR.M.S.D.で0.44オングストロームまで精密に決定することができた。その結果、疎水性残基のクラスターによってコンパクトに折り畳まれた3本のαヘリックス構造を持つことが判った。得られた構造はショウジョウバエEngr ailedやAnnt enapedi aなどの典型的なhomeoドメインと良く似ている。但し、DNAと直接相互作用する3番目のヘリックスのC末端部分は、POU-homeoではdi sor der した構造になっていた。
|