研究概要 |
ロイシンジッパー構造を有する核内がん遺伝子産物Mafの正常組織での機能を明らかにする目的で、特に転写因子としての機能の解析、発現の組織特異性、その標的遺伝子の同定などを中心に検討した。標的遺伝子の検討はMafの認識するDNA配列と類似の配列をDNAデーターベースより検索することによって作成した候補遺伝子のリストを基にした。その結果、mafがん遺伝子とその関連遺伝子の産物がこれまで分かっていた血球系細胞の他、眼(retina,lens)などで組織特異的発現の制御を担っていることなどが明らかになった。さらにいくつかの標的遺伝子の候補で検討が進行中である。またMafの機能ドメインを解析し、アミノ酸配列から予想されていたように、Maf蛋白のN末端3分の2が転写活性化ドメインとして機能しうることが確認された。らに転写活性化能の検討の過程でかなり広範な細胞にMafと認識配列の類似したおそらく未知の転写因子が存在していることが示唆された。MafやFos,Junなどの核内がん遺伝子産物およびNF-E2p45などCNCファミリーのbZip蛋白は非常に複雑な相互作用ネットワークを形成している。このネットワークはおそらく未知の因子を含むような、さらに大きな拡がりを持っていると予想され、このネットワークの中での各因子間のバランスが各種の2量体の存在比率を決定し、ひいては様々な標的遺伝子の発現を決定づける役割を担っているものと考えられた。
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