研究概要 |
多細胞生物において、細胞分化は、細胞間の認識とその相互作用によって生ずる。骨格筋の分化においても、筋芽細胞間、およびそれを取り巻く異種の細胞との相互作用が分化とその形態形成を引き起こすと考えられるが、それらの相互作用の分子的実体とそのメカニズムはあきらかにされていない。我々は、myogeninあるいはMyoDによって特異的に制御され、筋形成に関わりをもつ遺伝子群の実体、特に、筋発生と分化にかかわる遺伝子のカスケードのなかで、細胞同士の相互作用や細胞外因子に対する細胞の反応性の獲得や消失に関与するような遺伝子群の同定を明かにしようとするものである。 その目的で,myogeninおよびMyoDをそれぞれ誘導的に発現し、胎児性繊維芽細胞であるC3H10T1/2細胞を効率よく筋芽細胞に分化させ、これらの転写因子によって特異的に制御される。ターゲット遺伝子群を同定する系を作成した。そして、この系を用いて、興味深い発現を示す新しい遺伝子をクローニングすることに成功し、その解析を進めている。この遺伝子は、myogeninを誘導発現させた細胞において転写が誘導される遺伝子として単離したものであるが、マウスにおいては、胎児期から新生児期の筋細胞および骨において特異的な発現がみられ、さらにその遺伝子構造から、筋および骨形成に重要な機能をもった膜タンパク質ではないかと考えられた。さらに、このタンパク質に対する特異的な抗体を作成し、そのタンパク質の発現を調べたところ,繊維芽細胞では発現が見られず、樹立筋芽細胞において,myugenin陽性の筋芽細胞及び筋管で発現が見られた。次に、この分子の機能を探るために、そのcDNAを発現ベクターに挿入したプラスミドを種々の細胞で発現させ、増殖、接着、形態、分化などに及ぼす影響を検討した。その結果、MP2を高レベルで発現している細胞を調べると筋管形成が活性化されていることがわかった。さらに、細胞同士の接着能が増大していることがわかり、現在解析中である。
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