研究概要 |
1.糖脂質硫酸転移酵素(GST)を、EGF処理したヒト腎癌細胞(SMKT-R3、2.5X10^9個)から、基質アナローグをリガンドとするアフィニティークロマトグラフィーを用いて均一にまで精製した。精製GSTは還元状態のSDS-PAGE上、分子量54,000であった。比活性は1.2μmol/min/mgで、これまでラット腎および精巣、マウス脳から精製したと報告されているGSTの比活性よりも約200倍以上高く、完全精製標品と思われた。精製GSTを用いた基質特異性実験で、GSTは脂質と結合した糖鎖の非還元末端β結合糖を認識することがわかった。同様の培養及び精製を5回繰り返し約10μgの精製標品を得、リシルエンドペプチダーゼで消化し、逆相HPLCにかけペプチド断片の分離を行ない、6つの断片について部分アミノ酸配列を決定した。得られたアミノ酸配列について既存のアミノ酸配列データベースを用いてホモロジー検索を行ったところ新規配列であるので、cDNAクローニングに着手した。 2.SMKT-R3細胞の粗画分を用いてGg3Cerの硫酸転移反応を調べると、その産物はガラクトースに硫酸基のついたSM2aではなくて、末端N-アセチルガラクトサミンに硫酸基のついたSM2bであった。さらに、SM2aを基質としてSB2が合成された。このことから、SB2の合成経路はLacCer→SM3→SM2a→SB2であることが示唆された。 3.ピリドキサルリン酸(PLP)は、GSTのPAPS認識部位近傍のリジン残基を修飾することにより、GST活性を非可逆的に不活化することを示した。 チロシンキナーゼ阻害剤Genisteinを用いた検討で、SMKT-R3細胞ではEGFレセプター以外の内在性のチロシンキナーゼが活性化されており、これが自律増殖とGST発現の両者に働いている可能性が示唆された。
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