Helicobacter pyloriの生細胞への接着機構を検討するために、胃ガン由来細胞株を用いて、菌の接着の半定量的解析が可能な系を作成し、その接着における硫酸化糖脂質特にスルファチドの重要性を明らかにした。この研究結果は平成6年度日本消化器病学会総会および第7回欧州ヘリコバクター研究会議(1994年米国ヒューストン)において発表した。現在その成果を英文論文にまとめ投稿中である。またこの研究に関連し、スルファチドのヒト胃粘膜での組織分布、各種病態での変化について検討し、これが胃粘膜上皮細胞に局在していること、炎症や悪性化によってその分布や含量が変化することを示唆する所見を得た。この結果は大正消化器国際シンポジウムならびに平成6年度日本消化器病学会大会において発表した。この成果は現在英文論文としてまとめ印刷中である。 このように、すでに我々が明らかにしている薄層クロマトグラム上でこの細菌がスルファチドに結合生を示すだけでなく、生細胞での接着にも重要であること、またそれが胃粘膜上皮細胞に豊富に存在していることは、実際の菌の胃粘膜への接着にスルファチドが重要な役割を持っていることを示唆するものである。そこでスルファチドを認識する細菌側のアドヘシンの同定を行うため、硫酸化糖結合アフィニティークロマトグラフィーによってその精製を試み、いくつかの蛋白が特異的に結合することが明らかにできた。これらをポリアクリルアミドゲル電気泳動分離後、いくつかの蛋白についてその部分アミノ酸配列を決定した。今後この配列をもとにオリゴヌクレオチドを合成し、クローニングを行う予定である。
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