研究概要 |
従来、一般に糖脂質糖鎖合成酵素活性の測定には糖供与体の糖部分の放射活性標識体が汎用されている。しかし、当物質は高価なことや放射物質の汚染の問題から新たな酵素活性の測定法が望まれていた。本報告は申請者らが合成開発したω-アミノ糖脂質のアミノ基を蛍光誘導体化した糖脂質を用いて、各種糖脂質合成酵素の基質としての有効性や反応性、更に反応生成物の分離性を調べてその構造を同定し、糖鎖合成酵素の新たな活性測定法に資することを目的とした。 アミノドデカン酸を持つアミノ-GalCer,-LacCer,-GM3あるいは酵素反応で生成が予想されるアミノ糖脂質を用い、蛍光物質としてダンシル基を導入した。アミノ糖脂質のダンシル化は定量的に進み、これらの誘導体化糖脂質の構造はFAB-MSおよびNMRにより同定した。これらを基質としてラット肝ゴルジ画分を酵素源とし、反応生成物の分離にイオン交換法を用いて硫酸転移酵素(GalCer誘導体気質とするスルファチド合成酵素)、シアル酸転移酵(LacCer誘導体基質とするGM3合成酵素)、GalNAc転移酵素(GM3誘導体を基質とするGM2合成酵素)を測定したところ、従来の放射活性糖供与体を用いる方法に比べてやや低感度を示したが、受容体としての酵素学的な親和性は親糖脂質と変りなかった。以上のようにして放射活性体を用いない糖鎖合成酵素の活性測定法を確立し、更に自動試料導入装置を接続した高速液体クロマト装置を利用することによって活性測定法の汎用性を高めた。
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