平成6年度はハムスター卵管糖タンパク(オビダクチン)と精子及び卵との特異的結合を検討する実験を行った。 1 ハムスター精子3×10^7個と精製ハムスターオビダクチンをインキュベーションしたところ、5〜50ngのタンパク量範囲で結合は直線的となりそれ以上のオビダクチン量ではプラトーに達した。この結果からオビダクチンに特異的結合をする分子が1分子精子上にあることが示唆された。 2 精巣上体より採取した精子がオビダクチンと反応することから、精子上の結合タンパクの由来を調べるため精巣上体の凍結切片を作製しオビダクチンを用いて蛍光染色を行った。精巣上体上皮のlumen側及び上皮細胞質内に強い蛍光が観察された。この結果から、精子頭部に存在が確認されたオビダクチン結合分子は精巣上体上皮にも存在することが明かとなった。しかしこの結果だけでは精子の結合分子のoriginを特定するには不十分であるので更に他の部位の切片も作製し現在検討を行っている。 3 卵透明帯とオビダクチンの結合に預かる分子のエピトープを調べるため透明帯を酵素処理しオビダクチンとのbinding実験を行った。endo-galactosidase処理し糖鎖を部分的に除去した透明帯はオビダクチンとの結合能を失った。この結果から透明帯ではその糖鎖がオビダクチンとの結合に直接関与していることが示唆された。 以上の結果からハムスターオビダクチンは配偶子に特異的に結合することが定量的に確認され特に透明帯との結合には糖鎖が重要であることが明らかになった。
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