研究概要 |
個体レベルでの細胞死の機構を明らかにすることを目的として、細胞死(アポトーシス)抑制活性を有するbcl-2遺伝子のジーンターゲッティングを行なった。本年度の成果としてbcl-2遺伝子に変異をホモに持つマウスを得ることに成功し、bcl-2欠損マウスに生じる種々の異常を解析した。bcl-2遺伝子をホモに欠失しても胚発生は正常に進み、一見正常なbcl-2欠損マウスが生まれた。個体差はあるが特徴的な異常として1)寿命が短い、2)身体、耳が小さい、3)リンパ球の寿命が短く、胸腺と脾臓が小さい、4)腎臓の形成異常によるpolycystic kidney disease様の病相、5)毛のはえ変わり時の毛色の脱色(色素細胞内の活性酸素レベルの上昇によるメラニン合成の阻害によるものではなく、色素細胞の欠損による)、6)小腸の絨毛の発育遅延による形態異常、7)adult bcl-2欠損マウスにおける成熟B細胞の欠如(これら細胞の短命さと同時に骨髄中の前駆素の異常が原因である)、などが明らかとなった。今後、更にbcl-2欠損マウスの解析を推し進め、生体内におけるbcl-2遺伝子の役割を明らかにする予定である。 また、細胞死の機構を個体レベルで明らかにするためには細胞死を誘導する遺伝子の解析も重要であると考え、細胞死を実行する遺伝子としてヒトB細胞cDNAライブラリーよりric遺伝子をクローニングした。ric遺伝子は細胞死実行遺伝子であるCed-3,ICE,Nedd2/Ich-1とアミノ酸レベルで高い相同性があり、システインプロテアーゼ活性を持つことが予想され、高発現により幾つかの培養細胞に細胞死を引き起こすことがわかった。さらに、生体内で広く発現していることが明らかとなった。そこでric遺伝子の生体内での役割を明らかにするためにジーンターゲッティングを行なうべh準備を進めている。
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